文・写真=笙野頼子 update:2018/07/03
お邪魔いたします笙野頼子です。
四月末、Web河出に、TPP警告のための文章、「ウラミズモ今ここに」を発表しています。その時に予告しましたこれもTPP警告小説「ウラミズモ奴隷選挙」四百枚を、この六月二十三日に校了いたしました。七月発売の文藝掲載です。
この校了を終えて、二十六日、今まで行けなかった参議院会館前のTPP抗議集会についに、佐倉から出掛けました(最近はリウマチが悪く遠出が大変です)。
この時はまだ可決されていませんでしたので元気そうです。手作りプラカと、家にある巫女鈴を持っていき、お言葉に甘えコールさせていただきました。農民連の方や食健連の方、その他の方々にも大変親切にしていただきました。集会に参議院の田村智子さんが来てくださいました。
私は病気のためあまり外に出ず、今までデモというと秘密保護法一回、ヘイトカウンター二回に行っただけなので、こういうところのマナー、ルールを知りません。きっとご迷惑だったと思います。しかし寛容に受け入れてくださいました。
皆さん柔和なお顔つきで個人参加の御方も多く、難病の私を気づかってくださいました。TPPは、弱いもの、おとなしいものから食っていく。その残忍さに怒りを覚えました。写真は参加していた記者さんに撮っていただきました。心から感謝いたします。
自分で考えていったその時のコールと言葉の一部をここに書いておきます。
いちばん安くなるのは国民の命、靴も教科書も給食もない国になっていいのか?
国を売るな、国民殺すな、TPP強盗、TPP犯罪、TPP暴力、TPP売国、水を取るな、薬を取るな、食べ物取るな、命を取るな、国を返せ、主権を返せ、税金返せ、S・T・O・P・T・P・P・NO・NO・NO・NO・TPP・NO、(で絶叫)
2011年にTPPという、国民奴隷化、植民地化、国産全業種絶滅、日本語も滅亡、という恐怖が存在する事に気付き、授業や作品で批判、警告を続けておりました。環太平洋パートナーシップ協定という正確な名前ではなく、判りやすく人喰い条約と読んで危惧しておりました。このTPPは発効すれば国民のほぼ全員があらゆる分野に渡って長年の深刻な被害を受けます。日本沈没です。
例えて言うならばあの恐ろしい高プロは人喰い鬼、しかし、TPPは地獄です。鬼のいない地獄はありえません。鬼を一匹成敗しても、地獄はそれ自体鬼の住処なのです。
このTPP、水道法改悪、種子法廃止、で日本は滅びます。RCEPが並べば、アジアまでも。
二十八日は遠出でリウマチが悪くなり、家でネットの国会中継を見ていました。内閣委員会では田村智子さん、山本太郎さんらによるTPP批判が行われました。このお二人は、関税、医療、水道、という重要分野で、まさに国が壊れてしまうほどの大問題と新事実を指摘しました。にもかかわらず、「鬼の首」をとったように、と地獄の大臣は抜かし、強引な採決。採決直前、山本太郎さんの、長時間に渡る反対討論に涙しました。
二十九日は本議会で批准手続きが終わる。まだ足は引きずっていたけれど、出掛けました。国家主権が死んだと思い喪服を着ていきました。
しかし諦めてはいけない。私はもう少しTPP自体の批判を続けていきます。諦めないことが大切です。取り敢えず発効までは被害はないはずです(しかし日本政府は今から被害が出るように次々とやってのけています)。但し、発効してしまうまでは離脱も出来ません。トランプは一方的な宣言をし、政府が批准手続きをしなかったので、発効しても影響をうけないのです。しかし日本は批准手続きを終えてしまいました(涙)。
無論発効後に脱退するとしても、純理論的になら離脱は出来ます。しかし政権交代が必要条件、さらに、政権をとってしまえば野党も判らない。余程の小さいところか老舗でないと、不安があります。野党あげての抵抗による、解散総選挙を望んで、私は新作を書いておりました。今後は植民地から独立する程のエネルギーがいるかもと思っています。
この国難と後は老猫の腎不全、私はそれで手一杯です。で?他に何が?
早稲田文学渡部批判について?書いてみるかというお声は特にかかりません。
しかしそもそも私、第一作品集から名前は出さずとも渡部批判入りです。読者なら判ります。ついでに言うと、あの、すが秀実とかいう方、彼がパーティで私の側によってくると人々が追い払う。一生に十分も会っていません。彼は私の初期作品黙殺、中期を○○の力と侮辱、三島賞受賞にもクレーム、近作はいらないとも。渡部氏も同様、読めない双子です。
いわんや松浦理英子さんが左右盲だとツイートする人々はむろん私の作品どころか対談さえ確認していない。テキストにあるように左右盲は私です。
他、川上未映子さんについてはずっと面識もご縁も一致もなく、その他のなにもないままにずっと来てしまいました。つまり北原みのりさんの「日本のフェミニズム」にある、名前を出さない批判(責任編集についての)こそが、漸くの初「接近」です。でも、あれこそがまさに、早稲田文学の、セクハラ体質。ですのでどうぞ、中傷目的以外の方、「この件について笙野がまだ書いてない」と誤認せずに、(他の章とともにぜひ)お読みください。市川君についても、私はずっと何かしら批判して来ました。読者は知っています。
最近のツイートでほぼ間違っていないものはせいぜいブロガーズと掲載誌のツイートくらいですね(なお、ワープロは中古店で買い換えています、これも以前書きました)。「笙野はまだセクハラについて何も言っていない」?新作だけでもお読みくださいませ。
そして、私の新しい情報や個人情報はこの笙野頼子資料室が確実です。モモチさんにはいつも心から感謝しております。感謝あるのみです。無償で応援してくださっています。評論家が読み落とした部分も読んでおられます。何の義務もないのに助けてくださいます。ですので他の「読者」の方、けしておかしな要求をしないで下さい。あと猫の近況。
写真は一枚だけ、ニューフェイス、ピジョンです。
飼い主様急逝の老猫雌、茶虎、腰椎一個欠損、お団子尻尾。慢性腎不全のステージ3、病気は承知の上で貰いました。来た翌日から私の膝に乗ってしまい、今も元の家と錯覚しているようです。数値が上がって一度は輸液になりかけたものの、新薬ラプロスがきいて今は投薬とご飯に混ぜるリン吸着剤(レンジアレン)だけになっています。しかし元から腎不全の症状は殆どなく、大変元気です。
飼い主にだけ従順、凄い運動量、口は贅沢、獣医師NG一名。びびりの癖に気位ばかり高く、潔癖症の抱っこ主義者だが野性もきつい。
実はミルキィ・イソベさんが今度私の猫の写真集(書きたし小説百枚と未収録作品)を出してくださるので、この子をずっと隠しておいたのです。しかし、今回はTPP批判拡散のためですので、一枚だけ先に(ミルキィさんごめんなさい原稿遅れてます)。
他七月に赤旗で対談、群像の新年号で短編、民主文学新年号で短い文章、というのが今後の予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
※著者の許可を得て掲載しています。